美容院へ行く。
「どういった感じにしますか?」
「まじめな母でお願いします」
清潔感のある、控えめな『受験に向かう母』を希望した。
普段、大学でも子どもがいる事を言うと揃いも揃って皆オーバーアクションをしてくれる程自分は母親らしく見えないらしい。
服装、言葉遣いからはもちろん、なにより子どもを育てている人という雰囲気が感じられないのだろう。
台所でお味噌汁作っている姿より、カップラーメンにお湯を注いでいる姿の方がきっと似合うのであろう。
まずい。これではまずい。
まずは髪型から変えていこう。
しかし本当はそういうのは好きではないことを初対面なのに見透かされたのか、それとも似合わないと判断されたのか、
「ココいっちゃっていいですか?」
と、前髪の一部だけをざっくり短く切られた。
まじめな母は一瞬で床へぱさりと落ちた。