私は子供の頃、夢遊病だった。
初めて症状が出たのは、小学生になってすぐのこと。
母曰く、2階で普通に寝たはずの私が、階段を降りてきたと思ったら、
居間にいる父を睨みつけ、黙って上に戻っていったとのこと。
目ははっきりと開いていたらしい。
翌朝、その話を聞かされた私は、全く覚えていなかった。
それ以降も、窓を開けようとしたり、壁を引っ掻いていたことがあったらしいが、
まぁ、なんとか落ち着いた。
中学に入ってから、また症状が現れ始めた。
ある時、知人から電話がかかってきた。
知人「昨日はどうした?やっぱり来れなくなっちゃった?」
私 「……え?」
知人「昨日電話をくれて、『今から行きます』って言ってくれたじゃない?」
私 「……」
知人「あれ?覚えてない。あははは。寝ぼけてる感じだったもんね」
私 「……そ、そうなんですか?」
知人「だってあまりにも眠そうな声だったから、『眠いの?』って聞いたら、『眠いです』って答えてたもん」
私 「……」
……それ、眠いんじゃなくて、寝てるんです。
一瞬信じられなかったが、部屋を見ると、確かにアドレス帳を開いた形跡が残っていた。
携帯電話もない時代。私は知人の電話番号を、眠りながら探したらしい。
そして何より、知人がそういった冗談を言うわけがなかった。
なぜなら知人は不登校支援センターの人だからだ。
(つづく)