私が初めて競馬に触れたのは、小学生の時だった。
当時流行していたファミコンから「ファミリージョッキー」なる競馬ゲームが発売された。
プレイヤーは騎手となり、馬を選んでレースを進めていくのだが、操作は至って単純。
Aボタンを連打してムチを入れるだけというもの。
しかし随所随所に細工が施されており、
コースに落ちている星マークを拾えばエネルギーが一気に上がり、
ドクロマークを踏んだものならば馬はずぶずぶと後退していく。
このシンプルなゲームが、私たち3兄弟の間で大人気となった。
けれどファミコンにコントローラーは2つしか備え付けられておらず、
末っ子の私は必ずのけ者にされた。
長兄が1コンを握りしめ、次兄が2コンを掴み取る。
ケンカをしても勝てないと悟った私は、
いつも兄たちの横でじっとテレビの画面を見つめていた。