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エッセイ4

「絶対損をしないから」

悪徳商法のような台詞を私に言って、旦那は一口馬主を始めた。
我が家の財布の紐は、旦那が握っている。
競馬にいくら費やしているのか、私は全く知らない。
妻としては、愛馬が1勝をあげてくれるのを、ただただ願うばかりだった。
by inaw | 2013-07-02 20:25

エッセイ3

息子もすくすく大きくなり、小学生になった。
そんな彼の趣味は競馬観戦だ。

日曜になると、旦那と一緒にグリーンチャンネルを見た。
旦那がパソコンで検討している間、息子は競馬新聞に目を通す。
まだひらがなもまともに読めないのだが、紙面に書かれた◎や▲の意味は分かるらしい。

「この馬、前走と前々走の成績が悪いのに、何で◎が付いてるの?」
「調教がいいからだよ」
「じゃあさ、こっちの馬は1着、1着と来てるのに、何で◎がないの?」
「地方帰りって言って、今回は相手が強くなるんだよ」

ふんふんとうなずき、ほおづえをつきながら、新聞紙に赤ペンでいびつな○を書いた。

直線での叫びも一丁前だ。

「差せ!差せ!差せ!……あぁ。お父さん、今の審議だよね?」
「審議じゃないよ」
「だって5番、内に寄れてたよ」

子供は親の背中を見て育つもの。
息子は競馬用語を巧みに使い、早くも競馬場のおっちゃんの雰囲気を醸し出していた。

レースの合間には、
おりがみで作った大量のぴょんぴょんガエルで、これまたレースを行った。

「おっと!ここで大外からつっこんで来たのは3番です!!」

ひとさし指には、鉄棒でものぼり棒でもなく、
ぴょんぴょんガエルの跳ねさせ過ぎによってできたマメがあった。

そんな息子に旦那は聞いた。

「大きくなったら騎手になる?」

父165センチ、母150センチ。
小柄な血統の息子は、騎手にぴったりだ。
息子は少考し、思い詰めた表情で口を開いた。

「でも障害で落ちたらなぁ……」

騎手は難しいと判断。
どうやら夢は競馬新聞の記者か、競馬場で新聞を読む人らしい。
by inaw | 2013-07-01 17:15